シェフの著書 ビールの国の贈り物平成14年08月発売。

是非ご一読ください。

ドイツ地ビールの旅 第一回

ジンゲンのドイツ最小の博物館ビール

 ドイツで一番小さなビール醸造所博物館が元東ドイツのジンゲンにあります。
ワイマールから30キロ、エアフルトから40キロほど離れた所にある小さな村にファミリエ ブラウエライ シュミット(シュミット家族経営のビール醸造所)がそうです。
 千八百七十五年に初代のリハルト シュミットにより運営され、現在では四代目が経営している醸造所です。この醸造所が脚光を浴びるまでには長い道のりがあり、第二次世界対戦以降の歴史を語らなければなりません。
 この土地も東ドイツとなり、自由があまり効かなくなりました。初代から使われている醸造器機もすでに八十年以上もたってるため、故障も多く製造力も劣り、新しい機械を買い換えようと考えましたが、当時の東ドイツでは新しい機械はあ、そう簡単には入手出来ず、国からは「この醸造所を博物館にしよう」。との提案がありました。それにより建物等も新しく建て替えることが出来、国からは援助金も出るといった嬉しい話でした。ところが、そうなると自分達が精魂込めて造り上げてきたビールは、この醸造所で造ることができなくなります。博物館として運営された場合は、国の管理下におかれ、自分達の好きな事が出来なくなる事を知り、国の支援をことわることにしました。東ドイツ時代であったため、断ると今まで以上に自由がきかなくなります。それからは人に頼ることが出来なくなり、壊れた機械は自分達で直さなければなりません。シュミット・ファミリーの苦闘の始まりです。
 機械が壊れればもちろんビールは造れません。よって生活資金にも困るわけですが、そんなことにまけてはいられません。小さな醸造所にはありとあらゆる工具が壁に吊るされ、いつ出番が回ってきてもいいように整頓されております。千九百九十年ドイツが統一され、ファミリエ・ブラウエライ・シュミットが、「ドイツの注目すべきビール」としてで脚光を浴びることになります。ドイツ国内で一番古い機械を自分たちの手で修理し、現在でもそれらの機械ですばらしいビールを醸造する、歴史あるビール醸造所・博物館としてテレビに流されました。それからはいろんなもうけ話もありましたが、すでに東ドイツ時代で頑固さが鍛えられており、話の一切乗らず、現在でも昔ながらの手作業で、変らぬおいしいビールを造っています。テューリンゲンのホップを使ったピルツタイプのビールです。
 「ホップはバイエルンの方が物が良いのではないか」。と訊ねましたら、「たしかにバイエルンの方が香りが高く優れてるかも知れないが、テューリンゲンのビールにはテューリンゲンのホップが一番。それによって、我がファミリエ・シュミットの造るビールの特徴が出るのです。」と返されました。1週間で2000リットルしか造られない、貴重で伝統的な東ドイツのビール。ソフトにただよう麦とホップの混ざり合った香りが熟れた果実を感じさせ、滑らかな舌触りと口当たりの良さに、思わず笑みがこぼれます。ビールがだめな方にも飲めそうな、ビールのイメージを変えさせる一品です。
 ここジンゲンの村を訪れる以外には、10キロはなれた隣村のレストラン一軒でしか飲む事が出来ません。醸造所の中にある大きなテーブル、外におかれたいくつかの長テーブルが、車やサイクリングで訪れるビール愛好家を待ち望んでいます。おつまみには網焼きにしたソーセージと豚肉だけ。注文によりお客の前で焼いてくれます。ビールだけでもよし、ソーセージをつまんでもよし。時間を忘れゆっくり飲みたい気分になります。



ドイツ地ビールの旅 第二回

バンベルグの薫製ビール


 ドイツのベニスと言われ、世界文化遺産に指定された町バンベルグ。バイエルン州には沢山のビールがありますが、世界でも珍しいビールがこの町にあります。ラウフビールと呼ばれる薫製ビールです。人口75000人の小さな町ですがその町には十ものビール醸造所がありそのうちの二箇所が昔ながらの薫製ビールを造ってます。

 その内のひとつにシュレンケルレ醸造所があります。十二世紀に建てられた修道院ですが、現在ではビアホールレストランになっており、この建物の内部にはいると、中世にタイムスリップしたようにさえ感じられます。 町の中心に位置し、地元の人々や旅行者で常ににぎわい、独特な味の薫製ビールを飲みに来る人の多さに圧倒されます。ドイツでは有名なこのビール、薫製した鰺や鯖、スモークチーズのような香り。飲んだ後口中に麦芽の薫製された香りが快くただよいます。麦芽を乾燥させる時になら材を使い薫製の香りをかもしだしてます。一杯が500ミリのグラスにそそがれてきますので、なれないとそれを飲み干すのはきつく感じますが、地元の人は「数回飲めばなれる」と言います。

 このビールにはハムや生ハムなどが絶妙のハーモニーをかもしだします。ウナギなどの魚の薫製ローストポークや豚肉料理にも合います。ここの主人の話では、どんな料理にもよく合うビールだと言っていましたが、クリームを使った料理など、デリケートな料理にはまずあわないでしょう。それほど独特で話題性のある楽しいビールには、次ぎのようないわれがあります。

 昔、修道院が火事にあいました。地下の倉庫にしまっておいたモルトが煙りでむされてしまいました。修道院は石で創られ、扉は鉄、それが幸いし、モルトも燃えずにすんだわけです。うすっ茶色に変色した使い用のないモルト、すてるのも勿体ないとそれを使い、いつもどうりに造ってみました。できたビール、あめ色に光った色、飲んでみると今まで味わった事のない面白い味です。「これはいける」と次回からも同じように薫製されたビールが造られるようになりました。 

 この薫製ビールはバンベルグの町から昨年始めて外国に旅に出ました。どこの国へ・・・・。それは日本です。当店ではこのビールを味わうことが出来るのです。是非一度この薫製ビールの味わいを試してください。ビールの幅の広さを再認識することでしょう。

 バンベルグから北へ30キロほど行った所にコーブルクの町があります。
シュタインビール、石のビールが存在する町です。カラメルの甘にがい香りと味を持ち、地元では「寝る前に飲むには最高だ」と言い、眠気を誘う睡眠前に飲む唯一のビールと言われています。
 このビールは12時間かけ石を2500度までに熱します。その石を発酵途中のビールに入れるとビールに含まれる糖分が石に付着し、それがカラメル状になって、甘苦いこげた香りがつきます。このビールは地元消費用はもとよりドイツ全土、また海外輸出用に生産しています。



第三回 東西南北ビールの酔い

 ドイツの旅の楽しさのひとつは各町々、村々で異なったビールに出会う事でしょう。6000種もあると言われるビールの国、ビール好きの人間にはたまらない喜びです。特に好みのビールに出会ったときの感激は旅の醍醐味をより大きくしてくれます。そんな出会いを求めてビール紀行を楽しんでください。

 まずフランクフルトに到着しました。
早速ホテルのそばの飲み屋に駆け込みましょう。店の入り口にはビンディングビア(Binding Bier)と書かれてます。隣の飲み屋にはヘニンガービア(HenningerBier)と書かれてます。両方ともフランクフルトを代表するビールです。ヘニンガーは日本でも手に入りますが、ビンディングはそれほど大きな規模で生産してないのでここでしか呑めません。ではビンディングを一杯飲んで、隣の店でヘニンガーを、こんな楽しみ方もいいもんです。一杯で帰っても店の人はいやな顔一つしません。

東西南北の第一回目は南のバイエルンより始めます。

南部 Bayern バイエルン州(南ドイツ)

 ロマンティック街道の出発点ヴュルツブルグから東へ80キロほど行ったところに世界文化遺産に指定された町バンベルグがあります。薫製ビールで有名なこの町にはボヘミアンタイプの濃い黄金色をしたFaessla Hellesファーゼラ ヘレスビールがあります。
 バンベルグからニュールンベルグへ向かう中間地点にはフランケン地方のビール通の町として知られゴシック、ルネッサンス様式のたたずまいの町Forchheimフォルフハイムがあります。町の一角サートラーター通りには自家製ビールを扱うビア酒場が隣合うようにかたまっています。この中のひとつ、ネダー醸造所ではフランケン独特の炭酸が少なく薄いブラウン色したマイルドな味のビールが楽しめます。小麦で造られたワイツェンビールなど一軒一軒特徴のあるビールを提供してくれるので楽しい醸造所めぐりが出来ます。

当店のビールを参照ください。

 バンベルグから北へ40キロ行ったところコーブルグには石のビールSteinbierがあります。上面発酵と下面発酵で造られ1200度に熱した石を入れることによりビールにキャラメルのような甘味をもたらせてくれます。
 ワーグナーの音楽祭で有名なバイロイトにはマイセルス醸造所があり現在ではビール博物館としてバイロイト醸造所内にあります。ここではヨーロッパでも数少ないAktien Dryアクチェン ドライと言う辛口でホップが強く炭酸の良く利いたビールを造ってます。
バイロイトの郊外クルムバッハにはクルミナトールと呼ばれる13,2度、赤ワインと同じぐらいの高いアルコール度のビールがあります。

第二回 中部ドイツ ノルドライン・ウエストファーレン州

中部Nordrhein-Westfalenノードラインーウエストファーレン州(ケルン・デュッセルドルフ)

 この地域は上面発酵で造られたビールが殆んどで、初めて味わう味個性豊かなビールも多く存在します。ドイツ最大の大聖堂で有名な町ケルン。ここには町の名が付いた淡色ビールケルッシュがあります。
 ケルッシュビールの歴史はまだ浅いのです。ヴッパターラー ウィクラー クッパー醸造所が1962年にケルンにも我々独自の特徴あるビールを造ろうと出来ました。もちろんその前から似たような上面発酵ビールは存在してましたが、第二次世界大戦以降レスピを少し替え造られ、ケルンの名が付きました。
 ケルンから40キロ離れた隣町、デュッセルドルフにあるアルトビールに魅せられてケルンでも、と考えられたケルン人自慢のビールです。現在20ほどの醸造所がケルッシュを造っているので20種のケルッシュを味わうことが出来ます。醸造所兼バーの(Paeffgenペッフゲン、Gaffel-Hausガッフェルハウス、Zur Maltzmuehleツア マルツミューレ)が有名です。
ここでビールを注文する時は「アイネ シュタンゲビッテ」これが「ビール1杯お願いします。」の意味です。アイネは1、シュタンゲはこの地域で使われるビールグラスの事で、グラス1杯お願いと言った所です。

 デュッセルドルフは世界で一番長いバーカウンターのある町として住民はよく自慢してます。そしてアルトビールのある町として有名な町です。酸の強い独特の個性ある濃いあめ色のビールです。百数十年前にアルトビールが造られそれを飲むのが流行になり、現在に至りますが飲みだすとくせになるビールでもあります。ディーベルス、ハンネン、シュロッサー、ガッツワイラー等の大醸造所が70年ほど前からアルトを造ってます。これを飲むにはアルトシュタット(旧市街)へ行くべきでしょう。そこには醸造所兼バーが所狭しとひしめき合い、まさに庶民の飲みっぷりが観察できるところ。各店により違った味のアルトを飲むことが出来ます。デュッセルドルフ人が我々のビール醸造所と呼ぶアルトシュタトにある醸造所兼バーの「ツム ウエリゲ」、「ツム シュルッセル」や独特の雰囲気をかもしだす「ツム シッフェン」が有名です。当店のビールを参照ください。

 デュッセルドルフから電車で3〜40分北へ向かったドルトムンドもビールの町として知られてます。19世紀はビールの黄金の時期とまで呼ばれた町ドルトムント、ピルスタイプのビールが造られます。ドルトムンダー アクチェンブロエライ醸造所やへーベルス醸造所兼バー、ドルトムンダー クローネが有名です。ここにも町の名が使われたドルトムンダーエクスポートやドルトムンダー リッター(ドルトムンドの騎士)ビールがあり、柔らかな炭酸により、ソフトな口当たりその中にしっかりとした
独自の味を持っているビールです。


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